02後撰和歌集 – 百人一首note

39. 浅茅生の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき / 参議等

39. 浅茅生の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき / 参議等

(読み)
あさじうの おののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこいしき / さんぎひとし

(訳)
低い茅(ちがや)(ススキ)が生える、小野の篠原のように忍んできたけれど、もう抑えきれません。どうしてこんなにあなたが恋しいのでしょう。

(解説)
・『古今集』の「浅茅生の小野の篠原忍ぶとも 人しるらめやいう人なしに(詠み人知らず)」を本歌にしている。

・あまりて・・抑えきれないで

(出典)
02『後撰和歌集』


(作者)
参議等(さんぎひとし)。源等(みなもとのひとし)。(880~951)

・52代嵯峨天皇の曾孫。

・02『後撰和歌集』に採録された「東路の佐野の舟橋かけてのみ 思ひわたるを知る人ぞなき」は、本阿弥光悦作『舟橋蒔絵硯箱』の蓋の意匠に取り入れられた。


(品詞)
浅茅生
名詞


助詞・格助詞


(接頭語)名詞


助詞・格助詞

篠原
名詞

忍ぶれ
動詞「しのぶる」バ上二(已然)
(び/び/ぶ/ぶる/ぶれ/びよ)


助詞・接続助詞

あまり
動詞「あまる」ラ四(連用)
(ら//る/る/れ/れ)


助詞・接続助詞

など
副詞


助詞・係助詞


名詞


助詞・格助詞

恋しき
形容詞「恋し」シク活用(連体)
(〇/しく/し/しき/しけれ/〇)
(しから/しかり/〇/しかる/〇/しかれ)

(活用語)
浅茅生の 小野の篠原 忍ぶれあまりてなどか 人の恋しき

[動詞]
・しのぶ
・あまる

[形容詞]
・恋し

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37. 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける / 文屋朝康

37. 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける / 文屋朝康

(読み)
しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける / ふんやのあさやす

(訳)
風の吹く秋の野に、白く光る朝露。まるで糸を留めていない真珠が散り乱れているようだ。

(解説)
・「草の上の露」を「玉・真珠」に例えることはよくあったが「風に散る露=玉」を読んでいるところが新鮮。

・露(つゆ)は涙の例えとしても使われるため、「散る」という表現から恋が終わったことを表すのかも。

・『後撰集』の詞書(ことばがき)より。延喜の時代、60代醍醐天皇から求められて作った歌。

(出典)
02『後撰和歌集』


(作者)
文屋朝康(ふんやのあさやす)。(9C後~10C初)

・父は文屋康秀(22「吹くからに」)。多くの歌合わせに参加した。


(品詞)
白露
名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞

吹きしく
動詞「吹きしく」カ四(連体)
(か/き/く//け/け)


名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・係助詞

つらぬきとめ
動詞「つらぬきとむ」マ下二(未然)
/め/む/むる/むれ/めよ)


助動詞「ず」打消(連体)
(〇/ず/ず//ね/〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)


名詞


助詞・係助詞

散り
動詞「散る」ラ四(連用)
(ら//る/る/れ/れ)

ける
助動詞「けり」詠嘆(連体)
(けら/〇/けり/ける/けれ/〇)

 

(活用語)
白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける

[動詞]
・吹きしく
・つらぬきとむ
・散る

[助動詞]
・ぬ・・「ず」打消
・ける・・「けり」詠嘆

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25. 名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな / 三条右大臣

25. 名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな / 三条右大臣

(読み)
なにしおわば おうさかやまの さねかずら ひとにしられで くるよしもがな / さんじょううだいじん

(訳)
その名前を負うなら逢坂山のさねかずらよ。たぐりよせて人に知られずに会えたらいいのに。

(解説)
・「もがな」・・~ならいいのに(願望)

・逢坂山は山城国(京都)と近江国(滋賀)の境界にある山。

(出典)
02『後撰和歌集』


(作者)
三条右大臣(さんじょううだいじん)。藤原定方(ふじわらのさだかた)。(873~932)

・京都・三条に屋敷があった。和歌や管弦にすぐれ女性に人気があった。

・いとこの藤原兼輔(27「みかの原」)とともに、醍醐朝の歌壇のパトロン的存在であり、紀貫之(35「人はいさ」)らを支援した。

 

さねかずら


(品詞)

名詞


助詞・格助詞


助詞・副助詞

おは
動詞「おふ」ハ四(未然)
/ひ/ふ/ふ/へ/へ)


助詞・接続助詞

逢坂山
固有名詞


助詞・格助詞

さねかづら
名詞


名詞


助詞・格助詞

知ら
動詞「知る」(未然)
/り/り/る/れ/れ)


助動詞「る」(未然)
未然形接続・下二段型
/れ/る/るる/るれ/れよ)


助詞・接続助詞(打消)

くる
動詞「来(く)」カ変(連体)
(こ/き/く/くる/くれ/こ(こよ))

よし
名詞

もがな
助詞・終助詞

 

(活用語)
名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人に知ら れくるよしもがな

[動詞]
・おふ
・知る
・来

[助動詞]
・れ・・「る」受身

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20. わびぬれば いまはた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ / 元良親王

20. わびぬれば いまはた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ / 元良親王

(読み)
わびぬれば いまはたおなじ なにわなる みをつくしても あわんとぞおもう / もとよししんのう

(訳)
逢うことができず辛いので今となってはもうどうなっても同じこと。難波潟にある澪標のように、身を尽くしても逢いたいのです。

(解説)
・59代宇多上皇の后、京極御息所(きょうごくのみやすどころ)との人目を忍ぶ恋の歌。

(出典)
02 後撰和歌集


(作者)
元良親王(もとよししんのう)(890~943)

・57代 陽成院(13「つくばねの」)の第一皇子だが、皇位は継げなかった。

・「いみじき色好み」、「一夜巡りの君」とも呼ばれた。

・『大和物語』などに親王の逸話が伝わる。


(品詞)
わび
動詞「わぶ」バ上二(連用)
(び//ぶ/ぶる/ぶれ/びよ)

ぬれ
助動詞「ぬ」完了(已然)
連用形接続・ナ変型
(な/に/ぬ/ぬる/ぬれ/ね)


助詞・接続助詞

いま
名詞

はた
副詞

同じ
形容詞「同じ」シク活用(終止)
(〇/く//き/けれ/〇)

難波
固有名詞

なる
助動詞「なり」存在
連体形接続・形容動詞型
(なら/なり or に/なり/なる/なれ/なれ)


名詞


助詞・格助詞

つくし
動詞「つくす」サ四(連用)
(さ//す/す/せ/せ)
(掛詞)
– 身を尽くし
– 澪標


助詞・接続助詞

・も
助詞・係助詞

逢は
動詞「逢ふ」ハ四(未然)
/ひ/ふ/ふ/へ/へ)


助動詞「む」意志(終止)
(〇/〇//む/め/〇)


助詞・格助詞


助詞・係助詞

思ふ
動詞「思ふ」ハ四(連体)
(は/ひ/ふ//へ/へ)

 

(活用語)
わび ぬれ ば いまはた同じ 難波なる みをつくしても 逢は むとぞ思ふ

[動詞]
・わぶ
・つくす
・逢ふ
・思ふ

[形容詞]
・同じ

[助動詞]
・ぬれ・・「ぬ」完了
・なる・・「なり」存続

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13. 筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる / 陽成院

(筑波山)

13. 筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる / 陽成院

(読み)
つくばねの みねよりおつる みなのがわ こいぞつもりて ふちとなりぬる / ようぜいいん

(訳)
筑波峯のてっぺんから段々と流れ落ちるみなの川のように、私の恋心も積もって深い淵のようになったよ。

(語句)
・みなの川・・筑波山から流れる川。「男女川」とも書く。

・淵・・流れが緩やかになって深くなったところ。

(解説)
・筑波山(つくばさん)は常陸国(ひたちのくに)茨城県の山。男体山(なんたいさん)と女体山(にょたいさん)という二つの峯からなる恋の歌の名所。「西の富士、東の筑波」と言われた。

・綏子内親王(すいしないしんのう)に当てて書いた歌。陽成院の后になった。

(出典)
02『後撰和歌集』


(作者)
陽成院(ようぜいいん)。57代陽成天皇(868~949)

・56代・清和天皇(せいわてんのう)と藤原高子(二条后・にじょうのきさき)の皇子。

・9才で即位したが、叔父の関白・藤原基経(藤原家最初の関白)に17才で退位させられ、58代光孝天皇(15「きみがため は」)に皇位を譲った。

20「わびぬれば」元良親王(もとよししんのう)の父。

(参考)
うた恋」1巻


(品詞)
筑波嶺
固有名詞


助詞・格助詞


名詞

より
助詞・格助詞

落つる
動詞「落つ」タ上二(連体)
(ち/ち/つ/つる/つれ/ちよ)

みなの川
固有名詞


名詞


助詞・係助詞

つもり
動詞「つもる」ラ四(連用)
(ら//る/る/れ/れ)


助詞・接続助詞


名詞


助詞・格助詞

なり
動詞「なる」ラ四(連用)
(ら//る/る/れ/れ)

ぬる
助動詞「ぬ」完了(連体)
連用形接続・ナ変型
(な/に/ぬ/ぬる/ぬれ/ね)

 

(活用語)
筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となり ぬる

[動詞]
・落つ
・つもる
・なる

[助動詞]
・ぬる・・「ぬ」完了

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10. これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関 / 蝉丸

10. これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関 / 蝉丸

(読み)
これやこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき / せみまる

(訳)
これがあの、東へ行く人も都へ帰る人も、ここで別れ、知っている人も知らない人も出会う逢坂の関なのですね。

(出典)
02『後撰和歌集』

(解説)
・「逢坂の関」は山城国(やましろのくに・京都)と近江国(おうみのくに・滋賀)の関所。

・歌枕(歌に出てくる地名)や、「逢ふ」との掛詞にもよく使われる。

・「逢うは別れの始め」という「会者定離(えしゃじょうり)」を詠んだとの解釈もある。「会っては別れ、別れては会うのが人生のならいだ」という仏教的な感慨も。


(作者)
蝉丸(せみまる)(9C後か)

・琵琶、蝉歌(声を絞って歌う)の名手。

・『今昔物語』では59代宇多天皇の皇子、敦実(あつざね)親王に仕えたと言われている。

・62「夜を込めて」にも「逢坂の関」が出てくる。


・「逢坂の関」は「鈴鹿の関」「不和の関」と並ぶ三関の一つ。逢坂の関を越えれば東国とされた。


(品詞)
これ
代名詞


助詞・間投助詞


代名詞


助詞・格助詞

行く
動詞「行く」カ四(連体)
(か/き/く//け/け)


助詞・係助詞

帰る
動詞「帰る」ラ四(連体)
(ら/り/る/る/れ/れ)


助詞・係助詞

別れ
動詞「別る(わかる)」ラ下二(連用)
(れ/れ/る/るる/るれ/れよ)


助詞・接続助詞


助詞・係助詞

知る
動詞「知る」ラ四(連体)
(ら/り/る//れ/れ)


助詞・係助詞

知ら
動詞「知る」ラ四(未然)
/り/る/る/れ/れ)


助動詞「ず」打消(連体)
(〇/ず/ず//ね/〇)


助詞・係助詞

逢坂の関
固有名詞
(掛詞)
– 逢坂
– あふ

 

(活用語)
これやこの 行く帰る別れては 知る知ら ぬ も 逢坂の関

[動詞]
・行く
・帰る
・別る
・知る

[助動詞]
・ぬ・・「ず」打消

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1. 秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ / 天智天皇

1. 秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ / 天智天皇

(読み)
あきのたの かりほのいおの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ(てんじてんのう)

(訳)
秋の田の仮小屋の屋根の編み方が粗いので、袖が夜露に濡れ続けている。

(語句)
・かりほ・・仮庵(かりいお)、仮に作った粗末な小屋

・〇〇を~み・・〇〇が~なので。理由。
苫をあらみ⇒苫が粗いので

・衣手(ころもで)・・そで

・つつ・・反復、継続の接続助詞。

(解説)
・秋の借り入れは年間で一番大切な行事。農民の辛苦を思いやる天皇の慈悲深さを表すとも言われている。

しかしこの歌は天皇本人ではなく、元は農民の歌とも言われている。万葉集の作者不明歌で「秋田刈る 仮庵を作り 我が居れば 衣手寒く 霜そ置きにける」が元の歌。

晩秋のわびしい静寂さを美と捉えた歌。言外に静寂な余情を持っているとして定家はこの歌を「幽玄体」の例としてあげた。

・平安京を開いた50代桓武天皇は天智天皇系の直系の流れ。そのため天智天皇は平安時代の歴史を語るうえで外せない存在として一番に配置されたと考えられる。


(作者)
38代天智天皇(626-672・享年46)中大兄皇子。

・『万葉集』を代表する歌人の1人。父は34代舒明天皇、母は35代皇極(37斉明)天皇。

・大化の改新をすすめ、中央集権の国家を作った。近江令の制定、戸籍づくり、水時計など。

・近江神宮は天智天皇が祀られているため「競技かるたの殿堂」となっている。

・『万葉集』天智天皇の歌
香具山(かぐやま)は畝傍(うねび)を愛(を)しと 耳梨(みみなし)と 相(あひ)あらそひき 神世(かみよ)より かくにあるらし 古昔(いにしへ)も然(しか)にあれこそ うつせみも 嬬(つま)をあらそふらしき

(訳:香具山は畝傍山を妻にしようとして耳梨山と争った。神代からそうであった。昔からそうだったからいまでも妻を奪い争っている。)

(出典)
02『後撰和歌集』


(品詞)

名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞

仮庵
名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・間投助詞

あら
形容詞(語幹)


接尾語


代名詞


助詞・格助詞

衣手
名詞


助詞・係助詞


名詞


助詞・格助詞

ぬれ
動詞「ぬる(濡る)」ラ下二(連用)
(れ//る/るる/るれ/れよ)

つつ
助詞・接続助詞
反復・継続
連用形接続
(活用語)
秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ

[動詞]
・ぬる(濡る)

[形容詞]
・あらし(粗し)

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