07千載和歌集 – 百人一首note

95. おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に すみぞめのそで / 前大僧正慈円

(比叡山・延暦寺 東塔)(滋賀県・大津市)

95. おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に すみぞめの袖 / 前大僧正慈円

(読み)
おおけなく うきよのたみに おおうかな わがたつそまに すみぞめのそで(さきのだいそうじょうじえん)

(訳)
分不相応ではあるけれど、辛いこの世を生きる人々に覆いかけたいものだ。私が住みはじめた比叡山での仏の祈りを。

(解説)
・世の人のために仏の加護を願う心

・おほけなく・・分不相応ではあるが

・わが立つ杣・・伝教大師(でんぎょうだいし)(最澄)が詠んだ歌にある「わが立つ杣に」という表現になぞらえた。

(掛詞)
すみぞめ
・住み初め
・墨染

(句切れ)
三句切れ

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
前大僧正慈円(さきのだいそうじょうじえん)(1155~1225)

・歴史書『愚管抄』の作者。

・父は藤原忠通(76「わたのはら こ」)。兄は九条兼実(くじょうかねざね)。

・14歳で出家し、天台座主(てんだいざす・比叡山延暦寺の最高僧。天台宗一門の首長)に四度なる。


(品詞)
おほけなく
形容詞「おほけなし」ク活用(連用)
– 本活用(〇//し/き/けれ/〇)
– 補助活用(助動詞)
(から/かり/〇/かる/〇/かれ)

うき世
名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞

おほふ
動詞「おほふ」ハ四(連体)
(は/ひ/ふ//へ/へ)

かな
助詞・終助詞


代名詞


助詞・格助詞

たつ
動詞「たつ」タ四(連体)
(た/ち/つ/つ/て/て)


名詞


助詞・格助詞

すみぞめ
(掛詞)
– すみぞめ(名詞)
– 住み初め


助詞・格助詞

そで
名詞

 

(活用語)
おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に すみぞめのそで

[動詞]
・おほふ
・たつ

[形容詞]
・おほけなし

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92. わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし / 二条院讃岐

92. わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし / 二条院讃岐

わがそでは しおひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし(にじょういんのさぬき)

(訳)
私の着物の袖は、引き潮の時にも見えない沖の石のように、人には知られないけれど、悲しみの涙で乾く暇もありません。

(解説)
・片想いの嘆き

・和泉式部(56)の歌の本歌取。
「わが袖は水の下なる石なれや 人に知られでかわく間もなし」

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
二条院讃岐(にじょういんのさぬき)。

・この歌が評判となり「沖の石の讃岐」と呼ばれるようになった。

・源頼政の娘。78代・二条天皇に仕えたあと、後鳥羽院(99)の中宮、宜秋門院任子に仕える。

・俊恵(85)の催した歌林苑にも参加した。


(品詞)

代名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・係助詞

潮干
名詞


助詞・格助詞

みえ
動詞「見ゆ」ヤ下二(未然)
/え/ゆ/ゆる/ゆれ/えよ)


助動詞「ず」打消(連体)
(〇/ず/ず//ね/〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)


名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞


名詞

こそ
助詞・係助詞

知ら
動詞「知る」ラ四(未然)
/り/る/る/れ/れ)


助動詞「ず」打消(已然)
(〇/ず/ず/ぬ//〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)

かわく
動詞「かわく」カ四(連体)
(か/き/く//け/け)


名詞


助詞・係助詞

なし
形容詞「なし」ク活用(終止)
– 本活用(〇/く//き/けれ/〇)
– 補助活用(助動詞)
(から/かり/〇/かる/〇/かれ)

(活用語)
わが袖は 潮干にみえ ぬ 沖の石の 人こそ知ら ね かわく間もなし

[動詞]
・見ゆ
・知る
・かわく

[形容詞]
・なし

[助動詞]
・ぬ・・「ず」打消
・ね・・「ず」打消

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90. 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色は変はらず / 殷富門院大輔

90. 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色は変はらず / 殷富門院大輔

(読み)
みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかわらず(いんぷもんいんのたいふ)

(訳)
お見せしたいものです。雄島の漁師の袖でさえも、波に濡れに濡れてそれでも色は変わらなかったというのに。

(解説)
・雄島は日本三景の一つ宮城・松島にある島。歌枕。

・源重之(48「風をいたみ」)作の「松島や雄島の磯にあさりせしあまの袖こそかくは濡れしか」からの本歌取り。

・血涙(紅涙)という表現は漢詩文の影響。

(句切れ)
・初句切れ
・四句切れ

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)(1131~1200頃)

・藤原信成の娘。後白河天皇の皇女・亮子内親王(殷富門院)(式子内親王の姉)に仕えた。

・多作であったことから「千首大輔」の異名がある。西行や寂蓮とも歌のやりとりをした。


(品詞)
見せ
動詞「見す」サ下二(未然)
/せ/す/する/すれ/せよ)

ばや
助詞・終助詞
願望


助詞・終助詞

雄島
固有名詞


助詞・格助詞

あま
名詞


助詞・格助詞


名詞

だに
助詞・副助詞


助詞・係助詞

ぬれ
動詞「ぬる(濡る)」ラ下二(連用)
(れ//る/るる/るれ/れよ)


助詞・格助詞


助詞・係助詞

ぬれ
動詞「ぬる(濡る)」ラ下二(連用)
(れ//る/るる/るれ/れよ)


助動詞「き」直接過去(連体)
連用形接続・特殊型
(せ/〇/き//しか/〇)


名詞


助詞・係助詞

変はら
動詞「変はる」ラ四(未然)
/り/る/る/れ/れ)


助動詞「ず」打消(終了)
未然形接続・特殊型
(〇/ず//ぬ/ね/〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)

(活用語)
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれ 色は変はら

[動詞]
・見す
・ぬる
・変はる

[助動詞]
・し・・「き」直接過去
・ず・・「ず」打消

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88. 難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき / 皇嘉門院別当

88. 難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき / 皇嘉門院別当

(読み)
なにわえの あしのかりねの ひとよゆえ みをつくしてや こいわたるべき(こうかもんいんのべっとう)

(訳)
なにわの入り江の芦の刈り根の一節(ひとよ)のような、仮寝の一夜をあなたと過ごしたせいで、澪標(みをつくし)のように身を尽くして恋し続けるのでしょうか。

(解説)
・摂政・藤原兼実の歌合で「旅宿に逢ふ恋」という題で詠まれた。遊女の心を想像して詠んだ。一夜限りゆえに思い悩む恋を表現。

20「わびぬれば」元良親王の本歌取り。

(掛詞)
かりね
・刈り根(名詞)
・仮寝(名詞)

ひとよ
・一節
・一夜

みをつくし
・澪標
・身を尽くし

(表現)
・序詞
・縁語

(出典)
・07『千載和歌集』


(作者)皇嘉門院別当(こうかもんいんのべっとう)(12世紀)

・崇徳院(77「せをはやみ」)の皇后である皇嘉門院(こうかもんいん)に仕え、別当(女官長)と呼ばれた。

・源敏隆(としたか)の娘。


(品詞)
難波江
固有名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞

かりね
(掛詞)
・刈り根(名詞)
・仮寝(名詞)


助詞・格助詞

ひとよ
名詞

ゆゑ
名詞


名詞


助詞・格助詞

つくし
動詞「つくす」サ四(連用)
(さ//す/す/せ/せ)

(掛詞)
・澪標
・身をつくし


助詞・接続助詞


助詞・係助詞

恋ひわたる
動詞「恋ひわたる」ラ四(終止)
(ら/り//る/れ/れ)

べき
助動詞「べし」推量(連体)
終止形接続(ラ変には連体)・形容詞形
(〇/べく/べし/べき/べけれ/〇)
(べから/べかり/べし/べかる/べけれ/〇)

(活用語)
難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたる べき

[動詞]
・つくす
・恋ひわたる

[助動詞]
・べき・・「べし」推量

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86. 嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな / 西行法師

86. 嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな / 西行法師

(読み)
なげけとて つきやはものを おもわする かこちがおなる わがなみだかな(さいぎょうほうし)

(訳)
嘆けといって、月は物思いをさせるのだろうか。いや、そうではないのに、月にかこつけて恨めしそうに落ちてくる私の涙よ。

(解説)
・「月前恋(げつぜんのこい)」というお題で詠まれた。恋の切なさ。

(句切れ)
・三句切れ

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
西行法師(さいぎょうほうし)。佐藤義清(さとうのりきよ)。(1118~1190)

・鳥羽院を警護する北面の武士だったが、23才で妻子と別れて出家。生涯旅をして過ごした。

・『山家集(さんかしゅう)』(1570首)、『西行上人集』などの歌集を残す。

・『新古今和歌集』には、最多の94首もの和歌が選ばれている。

・藤原俊成(83)とも親しく、俊成の歌は西行の出家も影響しているといわれる。

・「願わくは花のもとにて春死なん その如月の望月のころ」(ねがわくは はなのもとにて はるしなん そのきさらぎの もちづきのころ)という、自分の和歌のとおり2月(如月)16日(望月=満月)に亡くなった。

釈迦の入滅が2月15日で同じ頃にと望んだ。現在でいうと3月後半ごろなのでまさに花(桜)の時期。


(品詞)
嘆け
動詞「嘆く」カ四(命令)
(か/き/く/く/け/

とて
助詞・接続助詞


名詞

やは
助詞・係助詞

もの
名詞


助詞・格助詞

思は
動詞「思ふ」ハ四(未然)
/ひ/ふ/ふ/へ/へ)

する
助動詞「す」使役(連体)
未然形接続・下二段型
(せ/せ/す/する/すれ/せよ)

かこち顔なる
形容動詞「かこち顔なり」ナリ活用(連体)
(なら/なり or に/なり/なる/なれ/なれ)


代名詞


助詞・格助詞


名詞

かな
助詞・終助詞

 

(活用語)
嘆けとて 月やは物を 思は する かこち顔なる わが涙かな

[動詞]
・嘆く
・思ふ

[形容動詞]
・かこち顔なり

[助動詞]
・する・・「す」使役

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85. 夜もすがら もの思ふころは 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり / 俊恵法師

85. 夜もすがら もの思ふころは 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり / 俊恵法師

(読み)
よもすがら ものおもうころは あけやらで ねやのひまさえ つれなかりけり(しゅんえほうし)

(訳)
一晩中思い悩んでいるこの頃は、夜もなかなか明けきらないで、寝室の板戸の隙間までもが冷淡に思えるのですよ。

(語句)
・夜もすがら・・一晩中

・明けやる・・すっかりし終える
「明く」+補助動詞「~やる」

(解説)
・女性になりきって詠っている。

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
俊恵法師(しゅんえほうし)。(1113~1191)

・歌人で文学者。東大寺の僧になった。『方丈記』鴨長明の和歌の師でもある。

・源俊頼(としより)(74「うかりける」)の息子。

・自宅にて「歌林苑(かりんえん)」という和歌のサロンなどを開く。藤原清輔(84)、殷富門院大輔(90)、二条院讃岐(92)などが参加。


(品詞)
夜もすがら
副詞

もの思ふ
動詞「もの思ふ」ハ四(連体)
/ひ/ふ/ふ/へ/へ)

ころ
名詞


助詞・係助詞

明けやら
動詞「明けやる」ラ四(未然)
/り/る/る/れ/れ)


助詞・接続助詞

ねや
名詞


助詞・格助詞

ひま
名詞

さへ
助詞・副助詞

つれなかり
形容詞「つれなし」ク活用(連用)
– 本活用(〇/く/し/き/けれ/〇)
– 補助活用(助動詞)
(から/かり/〇/かる/〇/かれ)

けり
助動詞「けり」詠嘆(終止)
連用形接続・ラ変型
(けら/〇/けり/ける/けれ/〇)

 

(活用語)
夜もすがら もの思ふころは 明けやらで ねやのひまさへ つれなかり けり

[動詞]
・もの思ふ
・明けやる

[形容詞]
・つれなし

[助動詞]
・けり・・「けり」

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83. 世の中よ 道こそなけれ 思い入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる / 皇太后宮太夫俊成

83. 世の中よ 道こそなけれ 思い入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる / 皇太后宮太夫俊成

(読み)
よのなかよ みちこそなけれ おもいいる やまのおくにも しかぞなくなる(こうたいごうぐうのだいぶしゅんぜい)

(訳)
この世の中にはつらさから逃れる道はないものだなあ。思いつめて山に入ったものの、山奥でも鹿が悲しげに鳴いているのだから。

(解説)
・山に入る・・「出家する」の意味もある。しかし山奥(仏の道)に入っても世の中のつらさからは逃れられないと気付いた。

(句切れ)
二句切れ

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
皇太后宮太夫俊成(こうたいごうぐうのだいぶしゅんぜい)。藤原俊成。(ふじわらのしゅんぜい)。(1114~1204)

・藤原定家(97)の父。

・7番目の勅撰和歌集『千載和歌集』の撰者(77代後白河院の命)。

・歌学書『古来風体抄(こらいふうていしょう)』を著す。(『万葉集』から『千載和歌集』までの秀歌をあげ、史的展開を論ずる歌論。)

・平安時代末期、戦乱が激しくなり貴族社会から武家社会へ移り変わろうとしていた。俊成の友人、佐藤義清(さとうのりきよ)も出家して、西行法師(86「嘆けとて」)となったことで、俊成も出家を考えたが、自分は歌の道で行くことを決めた。

・俊成と定家は御子左家(みこひだりけ)という歌道家。歌道家とは和歌の指導的立場を担う家。

・藤原俊成女(としなりのむすめ)は俊成の孫娘であり、養女。『無名草子』の作者である説が有力。


(品詞)
世の中
名詞


助詞・間投助詞


名詞

こそ
助詞・係助詞

なけれ
形容詞「なし」ク活用(已然)
本活用(〇/く/し/き/けれ
補助活用(助動詞)
(から/かり/〇/かる/〇/かれ)

思い入る
動詞「思い入る」ラ四(連体)
(ら/り/る//れ/れ)


名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞


助詞・係助詞

鹿
名詞


助詞・係助詞

鳴く
動詞「鳴く」カ四(終止)
(か/き//く/け/け)

なる
助動詞「なり」推定(連体)
連体形接続・ラ変型
(〇/なり/なり/なる/なれ/〇)

(活用語)
世の中よ 道こそなけれ 思い入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴く なる

[動詞]
・思い入る
・鳴く

[形容詞]
・なし

[助動詞]
・なる・・「なり」推定

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82. 思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり / 道因法師

82. 思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり / 道因法師

(読み)
おもいわび さてもいのちは あるものを うきにたえぬは なみだなりけり(どういんほうし)

(訳)
思い悩んでいてそれでも命はあるのに、辛さにこらえきれないのは涙なのだなあ。

(解説)
・命と涙。自分ではコントロールできない二つを比べて表現している。

65「うらみわび」の歌と、「〜わび」・「あるものを」の部分が共通している。

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
道因法師(どういんほうし)。藤原敦頼(あつより)。(1090~1182?)

・崇徳院(77「せをはやみ」)に仕えた。

・80歳で出家。80代になってからも秀歌ができるよう住吉神社にお参りしたり、90代で歌会にも参加するなど歌道に熱心だった。

死後、『千載集』に多くの和歌が掲載されたのを喜び、撰者の俊成(83)の夢に現れたとの逸話が残る。


(品詞)
思ひわび
動詞「思ひわぶ」バ上二(連用)
(び//ぶ/ぶる/ぶれ/びよ)

さても
副詞


名詞


助詞・係助詞

ある
動詞「あり」ラ変(連体)
(ら/り/り//れ/れ)

ものを
助詞・接続助詞

憂き
形容詞「憂し」ク活用(連体)
本活用(〇/く/し//けれ/〇)
補助活用(助動詞)
(から/かり/〇/かる/〇/かれ)


助詞・格助詞

たへ
動詞「たふ(耐ふ)」ハ下二(未然)
/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ)


助動詞「ず」打消(連体)
(〇/ず/ず//ね/〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)


助詞・係助詞


名詞

なり
助動詞「なり」断定(連用)
連体形接続・形容動詞型
(なら/なり or に/なり/なる/なれ/なれ)

けり
助動詞「けり」詠嘆(終止)
連用形接続・ラ変型
(けら/〇/けり/ける/けれ/〇)

(活用語)
思ひわび さても命は あるものを 憂きたへ ぬは 涙なり けり

[動詞]
・思ひわぶ
・あり
・たふ

[形容詞]
・憂し

[助動詞]
・ぬ・・「ず」打消
・なり・・「なり」断定
・けり・・「けり」詠嘆

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81. ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる / 後徳大寺左大臣

81. ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる / 後徳大寺左大臣

(読み)
ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる(ごとくだいじのさだいじん)

(訳)
ホトトギスの鳴いた方を見渡したところ、ただ有明の月が残っているばかりである。

(解説)
・ほととぎすは夏を彩る代表。貴族たちは夏を告げるほととぎすの第一声「初声(はつね)」を待ち望んで夜を明かした。

・万葉集ではホトトギスは橘の花と一緒に詠まれることが多かったが、平安時代は鳴き声を詠まれるようになった。

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん)。藤原(徳大寺)実定(さねさだ)。(1139~1191)

・右大臣・藤原(徳大寺)公能(きんよし)の息子。藤原定家(97)のいとこ。

・和歌や音楽の才能があり、俊恵(85)の歌林苑歌人たちとも交流があった。『平家物語』にも登場する。


(品詞)
ほととぎす
名詞

鳴き
動詞「鳴く」カ四(連用)
(か//く/く/け/け)

つる
助動詞「つ」完了(連体)
連用形接続・下二段型
(て/て/つ/つる/つれ/てよ)


名詞


助詞・格助詞

ながむれ
動詞「ながむ」マ下二(已然)
(め/め/む/むる/むれ/めよ)


助詞・接続助詞
(順接・確定条件)

ただ
副詞

ありあけ
名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・係助詞

残れ
動詞「残る」ラ四(已然)
(ら/り/る/る//れ)


助動詞「り」存続(連体)
サ変・・未然形接続
〇四段・・已然形接続
(ら/り/り//れ/れ)

 

(活用語)
ほととぎす 鳴き つる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れ る

[動詞]
・鳴く
・ながむ
・残る

[助動詞]
・つる・・「つ」完了
・る・・「り」存続

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80. ながからむ 心も知らず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ / 待賢門院堀河

80. ながからむ 心も知らず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ / 待賢門院堀河

(読み)
ながからん こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもえ(たいけんもんいんのほりかわ)

(訳)
末長く愛し続けようというあなたの気持ちが本当か分からず、お別れした今朝は、黒髪が乱れるように心が乱れてもの思いに沈んでいます。

(解説)
・「後朝(きぬぎぬ)の歌」に対する返歌。

・ながからむ・・末永く愛し続けようという。

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)。(12世紀前半)

・院政期歌壇の代表女性歌人。

・待賢門院璋子(しょうし)(鳥羽天皇の皇后、崇徳院(77)・後白河上皇の母)に仕え、堀河(ほりかわ)と呼ばれた。


(品詞)
ながから
形容詞「ながし」ク活用(未然)
– 本活用(〇/く/し/き/けれ/〇)
– 補助活用(助動詞)
から/かり/〇/かる/〇/かれ)


助動詞「む」婉曲(連体)
未然形接続・四段型
(〇/〇/む//め/〇)


名詞


助詞・格助詞

知ら
動詞「知る」ラ四(未然)
/り/る/る/れ/れ)


助動詞「ず」打消(連用)
(〇//ず/ぬ/ね/〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)

黒髪
名詞


助詞・格助詞

みだれ
動詞「みだる」ラ下二(連用)
(れ//る/るる/るれ/れよ)


助詞・接続助詞

今朝
名詞


助詞・係助詞

もの
名詞


助詞・格助詞

こそ
助詞・係助詞

思へ
動詞「思ふ」ハ四(已然)
(は/ひ/ふ/ふ//へ)

 

(活用語)
ながから む 心も知ら ず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ

[動詞]
・知る
・みだる
・思ふ

[形容詞]
・ながし

[助動詞]
・む・・「む」婉曲
・ず・・「ず」打消

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