07千載和歌集 – ページ 2 – 百人一首note

75. ちぎりおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり / 藤原基俊

75. ちぎりおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり / 藤原基俊

(読み)
ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あわれことしの あきもいぬめり(ふじわらのもととし)

(訳)
あなたが約束してくださった恵みの露のようなはかない言葉を命のように大切にしていたのに、ああ今年の秋もむなしく過ぎていくようです。

(語句)
・させも・・さしも草(よもぎ)

(解説)
・興福寺で行われる「維摩講(ゆいまこう)の講師(こうじ)に、自分の息子が選ばれるよう藤原忠通(76)に頼んだが、果たされなかった。
(維摩講とは仏教の法会の一つ。『維摩経』を講読する行事。)

・恋の歌のようにも詠めるのがおもしろいところ。

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
藤原基俊(ふじわらのもととし)。(1060~1142)

・藤原俊家の子。藤原道長のひ孫。

・源俊頼(74)と並ぶ、院政期の歌壇の中心人物。伝統を重んじ保守的な歌風。


(品詞)
ちぎりおき
動詞「ちぎりおく」カ四(連用)
(か//く/く/け/け)


助動詞「き」直接経験の過去(連体)
連用形接続・特殊型
(せ/〇/き//しか/〇)

させも
名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞


名詞


助動詞「なり」断定(連用)
(なら/なり or /なり/なる/なれ/なれ)
連体形接続・形容動詞型


助詞・接続助詞

あはれ
感動詞

今年
名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・係助詞

いぬ
動詞「いぬ」ナ変型(終止)
(な/に//ぬる/ぬれ/ね)

めり
助動詞「めり」推量(終止)
(〇/めり/めり/める/めれ/〇)
終止形接続・ラ変型

 

(活用語)
ちぎりおき し させもが露を 命て あはれ今年の 秋もいぬ めり

[動詞]
・ちぎりおく
・いぬ

[助動詞]
・し・・「き」直接過去
・に・・「なり」断定
・めり・・「めり」推量

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74. 憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを / 源俊頼朝臣

(奈良・長谷寺)

74. 憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを / 源俊頼朝臣

(読み)
うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしかれとは いのらぬものを(みなもとのとしよりあそん)

(訳)
つれなかったあの人が振り向いてくれるようにと観音様にお祈りしたのに、初瀬の山おろしよ、激しく辛くあたれとは祈らなかったのに。

(解説)
・奈良・初瀬の長谷寺は恋の願いが叶うと有名。十一面観音がある。

平安時代は観音信仰が盛ん。長谷寺(大和)、石山寺(近江)、清水寺(山城)などが、霊験(れいげん)験(あらた)かな寺として有名だった。

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
源俊頼朝臣(みなもとのとしよりあそん)。(1055?~1129?)

・父は源経信(つねのぶ)(71「夕されば」)。息子は俊恵法師(85「夜もすがら」)。

・「新風(しんぷう)」と呼ばれた革新的な歌風は後世にも影響を与え、藤原俊成(83「よのなかよ」)にも受け継がれた。

・白河上皇の命で『金葉和歌集』の撰者となる。

・歌学書『俊頼髄脳』を著す。

・音楽の才能もあったといわれる。

・曾禰好忠(そねのよしただ)の46「ゆらのとを」を本歌取りして、好忠へのリスペクトを表明した。


(品詞)
憂かり
形容詞「憂し」ク活用(連用)
– 本活用(〇/く/し/き/けれ/〇)
– 補助活用(助動詞)
(から/かり/〇/かる/〇/かれ)

ける
助動詞「けり」(連体)
連用形接続・ラ変型
(けら/〇/けり/ける/けれ/〇)


名詞


助詞・格助詞

初瀬
固有名詞


助詞・格助詞

山おろし
名詞


助詞・間投助詞

はげしかれ
形容詞「はげし」シク活用(命令)
– 本活用(〇/しく/し/しき/しけれ/〇)
– 補助活用(助動詞)
(しから/しかり/〇/しかる/〇/しかれ


助詞・格助詞


助詞・係助詞

祈ら
動詞「祈る」ラ四(未然)
/り/る/る/れ/れ)


助動詞「ず」打消(連体)
未然形接続・特殊型
(〇/ず/ず//ね/〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)

ものを
助詞・接続助詞

 

(活用語)
憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを

[動詞]
・祈る

[形容詞]
・憂し
・はげし

[助動詞]
・ける・・「けり」過去
・ぬ・・「ず」打消

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67. 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ / 周防内侍

67. 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ / 周防内侍

(読み)
はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かいなくたたん なこそおしけれ(すおうのないし)

(訳)
春の夜の夢のように短く儚い間でも、いたずらな気持ちで腕枕を借りたら、つまらない噂が立つでしょう。それはくやしいではないですか。

(語句)
・かひなくたたむ・・つまらなく立つであろう
・名こそ惜しけれ・・うわさが立つのが悔しい

(掛詞)
・「かひなく」と「腕(かひな)」

(解説)
・周防内侍が「枕がほしい」とつぶやくと、藤原忠家が「どうぞ」と手を差し出した。この冗談に優雅に返した歌。

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
周防内侍(すおうのないし)。平仲子(たいらのちゅうし)。(11C後半)

・後冷泉天皇(70代)、後三条天皇(71代)、白河天皇(72代)、堀河天皇(73代)に内侍として仕えた。


(品詞)

名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞


名詞

ばかり
助詞・副助詞

なる
助動詞「なり」断定(連体)
連体形接続・形容動詞型
(なら/なり or に/なり/なる/なれ/なれ)

手枕
名詞


助詞・格助詞

かひなく
(掛詞)
ー かひな(腕)(名詞)
ー かひなし(形容詞)ク活用(連用)
本活用(〇//し/き/けれ/〇)
補助活用(助動詞)
(から/かり/〇/かる/〇/かれ)

立た
動詞「立つ」タ四
/ち/つ/つ/て/て)


助動詞「む」仮定・婉曲(連体)
未然形接続・四段型
「〇/〇/む//め/〇」


名詞

こそ
助詞・係助詞

惜しけれ
形容詞「惜し」シク活用(已然)
本活用(〇/しく/し/しき/しけれ/〇)
補助活用(助動詞)
(しから/しかり/〇/しかる/〇/しかれ)

 

(活用語)
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく 立た 名こそ惜しけれ

[動詞]
・立つ

[形容詞]
・かひなし
・惜し

[助動詞]
・なる・・「なり」(断定)
・む・・「む」(仮定・婉曲)

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64. 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木 / 権中納言定頼

64. 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木 / 権中納言定頼

(読み)
あさぼらけ うじのかわぎり たえだえに あらわれわたる せぜのあじろぎ(ごんちゅうなごんさだより)

(訳)
夜がほのぼのと明けてきて宇治川にかかった霧が途切れてくると、現れてきたのは川の浅瀬にある網代木だった。

(語句)
・朝ぼらけ・・夜明け方
・あじろぎ・・魚をとるしかけ。冬の風物詩。
・たえだえに・・とぎれとぎれに

(解説)
・平安時代には数少ない叙景歌。

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
権中納言定頼(ごんちゅうなごんさだより)。藤原定頼。(995-1045)

・和歌や書道、管弦に優れる。父は大納言公任(55「滝の音は」)。

・小式部内侍をからかったが、60「大江山」で返された。


(品詞)
朝ぼらけ
名詞

宇治
固有名詞


助詞・格助詞

川霧
名詞

たえだえに
形容動詞「たえだえなる」ナリ活用(連用)
(なら/なり or /なる/なる/なれ/なれ)

あらはれわたる
動詞「あらはれわたる」ラ四(連体)
(ら/り/る//れ/れ)

瀬々
名詞


助詞・格助詞

網代木
名詞

 

(活用語)
朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木

[動詞]
・あらはれわたる

[形容動詞]
・たえだえなり

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55. 滝の音は 耐えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ / 大納言公任

55. 滝の音は 耐えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ / 大納言公任

(読み)
たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なおきこえけれ(だいなごんきんとう)

(訳)
滝の音は長い年月の間に枯れて聞こえなくなったけれど、名高い評判は今も伝わっているよ。

(語句)
・絶えて・・聞こえなくなって
・久しくなりぬれど・・長い時間が経ってしまったけれど
・名こそ流れて・・名声、評判は流れ伝わってきて
・なほ聞こえけれ・・やはり、世間に知られている。「聞こゆ」は「評判になる」

(係り結び)
・こそ→けれ(已然形)

(解説)
・大覚寺(京都・嵐山/京の西の方)で詠まれた歌。200年前は嵯峨天皇の離宮だった。今は「名古曽滝跡(なこそのたきあと)」の碑が立っている。

(出典)
07『千載和歌集』


(作者)
大納言公任(だいなごんきんとう)。藤原公任。(966~1041)

・『大鏡』にも登場する。その中で和歌、漢詩、管弦に優れた「三船の才(さんせんのさい)」と称された。

・『和漢朗詠集』や『拾遺集』をまとめた。

・息子は藤原定頼(64「朝ぼらけ」


(品詞)

名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・係助詞

絶え
動詞「絶ゆ(たゆ)」ヤ下二(連用)
(え//ゆ/ゆる/ゆれ/えよ)


助詞・接続助詞

久しく
形容詞「久し」シク活用(連用)
本活用(〇/しく/し/しき/しけれ/〇)
補助活用(助動詞)
(しから/しかり/〇/しかる/〇/しかれ)

なり
動詞「なる」ラ四(連用)
(ら//る/る/れ/れ)

ぬれ
助動詞「ぬ」完了(已然)
連用形接続・ナ変型
(な/に/ぬ/ぬる/ぬれ/ね)
「~してしまった」


助詞・接続助詞


名詞

こそ
助詞・係助詞

流れ
動詞「流る(ながる)」ラ下二(連用)
(れ//る/るる/るれ/れよ)


助詞・接続助詞

なほ
副詞

聞こえ
動詞「聞こゆ」ヤ下二(連用)
(え//ゆ/ゆる/ゆれ/えよ)

けれ
助動詞「けり」詠嘆(已然)
連用形接続・ラ変型
(けら/〇/けり/ける/けれ/〇)
「~だなあ」

 

(活用語)
滝の音は 絶え久しく なり れど 名こそ流れて なほ聞こえ けれ

[動詞]
・絶ゆ(たゆ)
・流る(ながる)

[形容詞]
・久し

[助動詞]
・ぬ(完了)
・けり(詠嘆)

 

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