百人一首note – ページ 10

83. 世の中よ 道こそなけれ 思い入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる / 皇太后宮太夫俊成

83. 世の中よ 道こそなけれ 思い入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる / 皇太后宮太夫俊成

(読み)
よのなかよ みちこそなけれ おもいいる やまのおくにも しかぞなくなる(こうたいごうぐうのだいぶしゅんぜい)

(訳)
この世の中にはつらさから逃れる道はないものだなあ。思いつめて山に入ったものの、山奥でも鹿が悲しげに鳴いているのだから。

(解説)
・山に入る・・「出家する」の意味もある。しかし山奥(仏の道)に入っても世の中のつらさからは逃れられないと気付いた。


(作者)
皇太后宮太夫俊成(こうたいごうぐうのだいぶしゅんぜい)。藤原俊成。(ふじわらのしゅんぜい)。

藤原定家(97「来ぬ人を」)の父。『千載和歌集』の撰者(後白河院の命)。

・『古来風体抄(こらいふうていしょう)』(『万葉集』から『千載和歌集』までの秀歌をあげ、史的展開を論ずる歌論。)

・平安時代末期、戦乱が激しくなり貴族社会から武家社会へ移り変わろうとしていた。俊成の友人、佐藤義清(さとうのりきよ)も出家して西行法師(86「嘆けとて」)となったことで、俊成も出家を考えたが自分は歌の道で行くことを決めた。

・俊成と定家は御子左家(みこひだりけ)という歌道家。歌道家とは和歌の指導的立場を担う家。

・藤原俊成女(としなりのむすめ)は俊成の孫娘であり、養女。『無名草子』の作者である説が有力。


(品詞)
世の中
名詞


助詞・間投助詞


名詞

こそ
助詞・係助詞

なけれ
形容詞「なし」ク活用(已然)
本活用(〇/く/し/き/けれ
補助活用(助動詞)
(から/かり/〇/かる/〇/かれ)

思い入る
動詞「思い入る」ラ四(連体)
(ら/り/る//れ/れ)


名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞


助詞・係助詞

鹿
名詞


助詞・係助詞

鳴く
動詞「鳴く」カ四(終止)
(か/き//く/け/け)

なる
助動詞「なり」推定(連体)
連体形接続・ラ変型
(〇/なり/なり/なる/なれ/〇)

 

(活用語)
世の中よ 道こそなけれ 思い入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる

[動詞]
・思い入る
・鳴く

[形容詞]
・なし

[助動詞]
なる・・「なり」推定

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84. ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ いまは恋しき / 藤原清輔朝臣

84. ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ いまは恋しき / 藤原清輔朝臣

ながらえば またこのごろや しのばれん うしとみしよぞ いまはこいしき(ふじわらのきよすけあそん)

(訳)
生きながらえていたならば、辛い今のことも懐かしく思い出されるのだろうか。辛かった過去がいまは恋しく思うのだから。

(解説)
過去、現在、未来を見る諦観の歌。
諦観(ていかん):本質を明らかに見てとる。悟りの境地にあって物事をみること。


(作者)
藤原清輔朝臣(ふじわらきよすけのあそん)。

父・藤原顕輔(79「秋風に」)とは折り合いが悪く、出世できず苦しい日々を送る。

父より歌道の家、六条藤家(ろくじょうとうけ)を継ぎ、当時の歌壇の第一人者となる。歌学の大成者で『奥義抄(おうぎしょう)』『袋草紙(ふくろぞうし)』を著す。


(品詞)
ながらへ
動詞「ながらふ」ハ下二(未然)
/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ)


助詞・接続助詞
仮定条件

また
副詞

このごろ
名詞


助詞・係助詞

しのば
動詞「しのぶ」バ四(未然)
/び/ぶ/ぶ/べ/べ)


助動詞「る」自発(未然)
未然形接続・下二段型
/れ/る/るる/るれ/れよ)


助動詞「む」推量(連体)
未然形接続・四段型
(〇/〇/む//め〇)

憂し
形容詞「憂し」ク活用(終止)
本活用・・(〇/く//き/けれ/〇)
補助活用(助動詞)(から/かり/〇/かる/〇/かれ)


助詞・格助詞


動詞「見る」マ上一(連用)
(み//みる/みる/みれ/みよ)


助動詞「き」直接過去(連体)
連用形接続・特殊型
(せ/〇/き//しか/〇)


名詞


助詞・係助詞

いま
名詞


助詞・係助詞

恋しき
形容詞「恋し(こひし)」シク活用(連体)
– 本活用(〇/しく/し/しき/しけれ/〇)
– 補助活用(助動詞)
(しから/しかり/〇/しかる/〇/しかれ)

 

(活用語)
ながらへば またこのごろや しのば れ む 憂し 世ぞ いまは恋しき

[動詞]
・ながらふ
・しのぶ
・見る

[形容詞]
・憂し
・恋し

[助動詞]
・・「る」自発
・・「む」推量
・・「き」直接過去

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85. 夜もすがら もの思ふころは 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり / 俊恵法師

85. 夜もすがら もの思ふころは 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり / 俊恵法師

(読み)
よもすがら ものおもうころは あけやらで ねやのひまさえ つれなかりけり(しゅんえほうし)

(訳)
一晩中思い悩んでいるこの頃は、夜もなかなか明けきらないで、寝室の板戸の隙間までもが冷淡に思えるのですよ。

(語句)
・夜もすがら・・一晩中

・明けやる・・すっかりし終える
「明く」+補助動詞「~やる」

(解説)
・女性になりきって詠っている。


(作者)俊恵法師(しゅんえほうし)。

歌人で文学者。東大寺の僧になった。『方丈記』鴨長明の和歌の師。

源俊頼(としより)(74「うかりける」)の息子。自宅にて歌林苑(かりんえん)という和歌のサロンなどを開く。藤原清輔(84)、殷富門院大輔(90)、二条院讃岐(92)などが参加。


(品詞)
夜もすがら
副詞

もの思ふ
動詞「もの思ふ」ハ四(連体)
/ひ/ふ/ふ/へ/へ)

ころ
名詞


助詞・係助詞

明けやら
動詞「明けやる」ラ四(未然)
/り/る/る/れ/れ)


助詞・接続助詞

ねや
名詞


助詞・格助詞

ひま
名詞

さへ
助詞・副助詞

つれなかり
形容詞「つれなし」ク活用(連用)
– 本活用(〇/く/し/き/けれ/〇)
– 補助活用(助動詞)
(から/かり/〇/かる/〇/かれ)

けり
助動詞「けり」詠嘆(終止)
連用形接続・ラ変型
(けら/〇/けり/ける/けれ/〇)

 

(活用語)
夜もすがら もの思ふころは 明けやらで ねやのひまさへ つれなかり けり

[動詞]
・もの思ふ
・明けやる

[形容詞]
・つれなし

[助動詞]
けり・・「けり」

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86. 嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな / 西行法師

86. 嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな / 西行法師

(読み)
なげけとて つきやはものを おもわする かこちがおなる わがなみだかな(さいぎょうほうし)

(訳)
嘆けといって、月は物思いをさせるのだろうか。いや、そうではないのに、月にかこつけて恨めしそうに落ちてくる私の涙よ。

(解説)
・「月前恋(げつぜんのこい)」というお題で詠まれた。恋の切なさ。


(作者)
西行法師(さいぎょうほうし)。佐藤義清(さとうのりきよ)。

鳥羽院を警護する北面の武士だったが23才で妻子と別れて出家。生涯旅をして過ごした。

各地を旅して『山家集(さんかしゅう)』(1570首)『西行上人集』などの歌集を残す。『新古今和歌集』には94首もの西行の和歌が選ばれている。

83「よのなかよ」の藤原俊成とも親しく、俊成の歌は西行の出家も影響しているといわれる。

「願わくは花のもとにて春死なん その如月の望月のころ」(ねがわくは はなのもとにて はるしなん そのきさらぎの もちづきのころ)という自分の和歌のとおり2月(如月)16日(望月=満月)に亡くなった。

釈迦の入滅が2月15日で同じ頃にと望んだ。現在でいうと3月後半ごろなのでまさに花(桜)の時期。


(品詞)
嘆け
動詞「嘆く」カ四(命令)
(か/き/く/く/け/

とて
助詞・接続助詞


名詞

やは
助詞・係助詞

もの
名詞


助詞・格助詞

思は
動詞「思ふ」ハ四(未然)
/ひ/ふ/ふ/へ/へ)

する
助動詞「す」使役(連体)
未然形接続・下二段型
(せ/せ/す/する/すれ/せよ)

かこち顔なる
形容動詞「かこち顔なり」ナリ活用(連体)
(なら/なり or に/なり/なる/なれ/なれ)


代名詞


助詞・格助詞


名詞

かな
助詞・終助詞

 

(活用語)
嘆けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな

[動詞]
・嘆く
・思ふ

[形容動詞]
・かこち顔なり

[助動詞]
する・・「す」使役

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87. 村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮れ / 寂蓮法師

87. 村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮れ / 寂蓮法師

(読み)
むらさめの つゆもまだいぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆうぐれ(じゃくれんほうし)

(訳)
にわか雨が降ってきて、そのしずくもまだ乾ききらない杉や槇の葉に、霧が立ち上っている秋の夕暮れだなあ。

(解説)
・水墨画を眺めているような幻想的な秋の情景。

・村雨(むらさめ)・・秋から冬にかけて降る激しいにわか雨。

・まだひぬ・・まだ乾かない


(作者)寂蓮法師(じゃくれんほうし)。藤原定長(さだなが)。

『新古今和歌集』の撰者だったが完成前に亡くなる。

幼少期に藤原俊成の養子となるが、実子の藤原定家が生まれたあと30代で出家。

『新古今集』の三夕(さんせき)の一首、「寂しさは その色としも なかりけり 槙立つ山の 秋の夕暮れ」の歌もある。


(品詞)
村雨
名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・係助詞

まだ
副詞


動詞「干る(ひる)」ハ上一(未然)
/ひ/ひる/ひる/ひれ/ひよ)


助動詞「ず」打消(連体)
(〇/ず/ず//ね/〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)

まき
名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞


名詞

たちのぼる
動詞「たちのぼる」ラ四(連体)
(ら/り/る//れ/れ)


名詞


助詞・格助詞

夕暮れ
名詞

 

(活用語)
村雨の 露もまだ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮れ

[動詞]
・干る(ひる)
・たちのぼる

[助動詞]
・・「ず」打消

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88. 難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき / 皇嘉門院別当

88. 難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき / 皇嘉門院別当

(読み)
なにわえの あしのかりねの ひとよゆえ みをつくしてや こいわたるべき(こうかもんいんのべっとう)

(訳)
なにわの入り江の芦の刈り根の一節(ひとよ)のような、仮寝の一夜をあなたと過ごしたせいで、澪標(みをつくし)のように身を尽くして恋し続けるのでしょうか。

(解説)
・摂政・藤原兼実の歌合で「旅宿に逢ふ恋」という題で詠まれた。遊女の心を想像して詠んだ。一夜限りゆえに思い悩む恋を表現。

20「わびぬれば」元良親王の本歌取り。


(作者)皇嘉門院別当(こうかもんいんのべっとう)。

崇徳院(77「せをはやみ」)の皇后である皇嘉門院(こうかもんいん)に仕え、別当(女官長)と呼ばれた。源敏隆(としたか)の娘。


(品詞)
難波江
固有名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞

かりね
(掛詞)
・刈り根(名詞)
・仮寝(名詞)


助詞・格助詞

ひとよ
名詞

ゆゑ
名詞


名詞


助詞・格助詞

つくし
動詞「つくす」サ四(連用)
(さ//す/す/せ/せ)

(掛詞)
・澪標
・身をつくし


助詞・接続助詞


助詞・係助詞

恋ひわたる
動詞「恋ひわたる」ラ四(終止)
(ら/り//る/れ/れ)

べき
助動詞「べし」推量(連体)
終止形接続(ラ変には連体)・形容詞形
(〇/べく/べし/べき/べけれ/〇)
(べから/べかり/べし/べかる/べけれ/〇)

 

(活用語)
難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき

[動詞]
・つくす
・恋ひわたる

[助動詞]
べき・・「べし」推量

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89. 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの よわりもぞする / 式子内親王

(彼岸花 花言葉:情熱)

89. 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの よわりもぞする / 式子内親王

(読み)
たまのおよ たえなばたえね ながらえば しのぶることの よわりもぞする(しょくしないしんのう)

(訳)
命よ。絶えてしまうなら絶えておくれ。このまま生きたならば恋心をこらえる気持ちが弱ってしまい人目につくと困るから。

(解説)
・人目を忍ぶ恋


(作者)式子内親王(しょくしないしんのう)。

後白河天皇の第3皇女、賀茂の斎院。

藤原俊成(83「よのなかよ」)や、息子の定家(97「来ぬ人を」)から、歌の指導を受けた。10歳年下の定家への思いを詠んだ歌とされる。

新古今集の代表歌人。


(品詞)
玉の緒
名詞


助詞・間投助詞

絶え
動詞「絶ゆ」ヤ下二(連用)
(え//ゆ/ゆる/ゆれ/えよ)


助動詞「ぬ」完了(未然)
連用形接続・ナ変型
/に/ぬ/ぬる/ぬれ/ね)


助詞・接続助詞
順接・仮定条件

絶え
動詞「絶ゆ(たゆ)」ヤ下二(連用)
(え//ゆ/ゆる/ゆれ/えよ)


助動詞「ぬ」完了(命令)
連用形接続・ナ変型
(な/に/ぬ/ぬる/ぬれ/

ながらへ
動詞「ながらふ」ハ下二(未然)
/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ)


助詞・接続助詞
順接・仮定条件

忍ぶる
動詞「しのぶ」バ上二(連体)
(び/び/ぶ/ぶる/ぶれ/びよ)

こと
名詞


助詞・格助詞

よわり
動詞「よわる」ラ四(連用)
(ら//る/る/れ/れ)


助詞・係助詞


助詞・係助詞

する
動詞「す」サ変(連体)
(せ/し/す/する/すれ/せよ)

 

(活用語)
玉の緒よ 絶え 絶え ながらへ忍ぶることの よわりもぞする

[動詞]
・絶ゆ
・ながらふ
・しのぶ
・よわる
・す

[助動詞]
・・「なり」完了
・・「なり」完了

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90. 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色は変はらず / 殷富門院大輔

90. 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色は変はらず / 殷富門院大輔

(読み)
みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかわらず(いんぷもんいんのたいふ)

(訳)
お見せしたいものです。雄島の漁師の袖でさえも、波に濡れに濡れてそれでも色は変わらなかったというのに。

(解説)
・雄島は日本三景の一つ宮城・松島にある島。歌枕。

・源重之(48「風をいたみ」)作の「松島や雄島の磯にあさりせしあまの袖こそかくは濡れしか」からの本歌取り。

・血涙(紅涙)という表現は漢詩文の影響


(作者)
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)。

藤原信成の娘。殷富門院(式子内親王の姉)に仕えた。

多作であったことから「千首大輔」の異名がある。西行や寂蓮とも歌のやりとりをした。


(品詞)
見せ
動詞「見す」サ下二(未然)
/せ/す/する/すれ/せよ)

ばや
助詞・終助詞
願望


助詞・終助詞

雄島
固有名詞


助詞・格助詞

あま
名詞


助詞・格助詞


名詞

だに
助詞・副助詞


助詞・係助詞

ぬれ
動詞「ぬる(濡る)」ラ下二(連用)
(れ//る/るる/るれ/れよ)


助詞・格助詞


助詞・係助詞

ぬれ
動詞「ぬる(濡る)」ラ下二(連用)
(れ//る/るる/るれ/れよ)


助動詞「き」直接過去(連体)
連用形接続・特殊型
(せ/〇/き//しか/〇)


名詞


助詞・係助詞

変はら
動詞「変はる」ラ四(未然)
/り/る/る/れ/れ)


助動詞「ず」打消(終了)
未然形接続・特殊型
(〇/ず//ぬ/ね/〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)

 

(活用語)
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれ 色は変はら

[動詞]
・見す
・ぬる
・変はる

[助動詞]
・・「き」直接過去
・・「ず」打消

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91. きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む / 後京極摂政前太政大臣

91. きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む / 後京極摂政前太政大臣

(読み)
きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねん(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)

(訳)
こおろぎが鳴いている霜の降りた夜、寒々としたむしろに着物の片袖を敷いて、独り寝するのだろうか。

(解説)
・霜の降りた夜の独り寝のわびしさ

・妻に先立たれた辛い思いをこの歌に詠んだ。

・(3)「あしびきの」の本歌取。


(作者)
後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)。藤原(九条)良経。

『新古今集』の撰者の一人で仮名序を執筆。家集『秋篠月清集(あきしのげっせいしゅう)』。38才で亡くなる。

父は藤原(九条)兼実(かねざね)、祖父は藤原忠道(76「わたのはら 漕ぎいでて」)、叔父は慈円(95)。

 

(七十二候・閉塞成冬(そらさむくふゆとなる))
片山に入り日のかげはさしながら しぐるともなき冬の夕暮れ(藤原良経)


(品詞)
きりぎりす
名詞

鳴く
動詞「鳴く」カ四(連体)
(か/き/く//け/け)


助詞・間投助詞

霜夜
名詞


助詞・格助詞

さむしろ
名詞

(掛詞)
・さむしろ(名詞)
・寒し(形容詞)ク活用


助詞・格助詞


名詞

かたしき
動詞「かたしく」カ四(連用)
(か//く/く/け/け)

ひとり
名詞


助詞・係助詞


助詞・係助詞

(ね)
動詞「寝(ぬ)」ナ下二(未然)
/ね/ぬ/ぬる/ぬれ/ねよ)


助動詞「む」推量(連体)
(〇/〇/む//め/〇)

 

(活用語)
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも

[動詞]
・鳴く
・かたしく
・寝(ぬ)

[形容詞]
・寒し

[助動詞]
・・「む」推量

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92. わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし / 二条院讃岐

 

92. わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし / 二条院讃岐

わがそでは しおひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし(にじょういんのさぬき)

(訳)
私の着物の袖は、引き潮の時にも見えない沖の石のように、人には知られないけれど、悲しみの涙で乾く暇もありません。

(解説)
・片想いの嘆き

・和泉式部の歌の本歌取。
「わが袖は水の下なる石なれや人に知られでかわく間もなし」


(作者)
二条院讃岐(にじょういんのさぬき)。

この歌が評判となり「沖の石の讃岐」と呼ばれるようになった。源頼政の娘。78代二条天皇に仕えたあと、後鳥羽院(99)の中宮、宜秋門院任子に使える。

俊恵(85)の催した歌林苑にも参加した。

 


(品詞)

代名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・係助詞

潮干
名詞


助詞・格助詞

みえ
動詞「見ゆ」ヤ下二(未然)
/え/ゆ/ゆる/ゆれ/えよ)


助動詞「ず」打消(連体)
(〇/ず/ず//ね/〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)


名詞


助詞・格助詞


名詞


助詞・格助詞


名詞

こそ
助詞・係助詞

知ら
動詞「知る」ラ四(未然)
/り/る/る/れ/れ)


助動詞「ず」打消(已然)
(〇/ず/ず/ぬ//〇)
(ざら/ざり/〇/ざる/ざれ/ざれ)

かわく
動詞「かわく」カ四(連体)
(か/き/く//け/け)


名詞


助詞・係助詞

なし
形容詞「なし」ク活用(終止)
– 本活用(〇/く//き/けれ/〇)
– 補助活用(助動詞)
(から/かり/〇/かる/〇/かれ)

 

(活用語)
わが袖は 潮干にみえ 沖の石の 人こそ知ら かわく間もなし

[動詞]
・見ゆ
・知る
・かわく

[形容詞]
・なし

[助動詞]
・・「ず」打消
・・「ず」打消

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